img 盛土部擁壁と切土部擁壁
1.盛土部擁壁と切土部擁壁について
 盛土部擁壁とは、擁壁裏込部の地形に特殊な条件のないごく普通の平坦部の擁壁をいい、「擁壁工指針」P100〜101の算定式(試行くさび法)により算定します。
 一方、切土部擁壁とは、擁壁の背後に裏込土とは異質の境界面が接近している場合の擁壁をいい、主働土圧の考え方は、「擁壁工指針」P103〜106に記述されています。切土部擁壁において、すべり線が背後斜面(地山線)に近接したり途中で交わるような場合は、背後斜面(地山線)の影響を考慮した土圧算定が必要となります。



2.切土部擁壁の土圧算定法について

切土部擁壁での土圧算定方法は、地山斜面とすべり線の関係により下記2種類に区分されます。
・切土部擁壁としての土圧@ すべり線と背後切土面(地山線)が同じ点で発する場合(「擁壁工指針」P104、解図5-9に該当する場合)
・切土部擁壁としての土圧A すべり線が背後斜面(地山線)に交わり、その点から地山線に沿って折れ曲がるような場合(「擁壁工指針」P106、解図5-10)に該当する場合)
 
■切土部擁壁としての土圧@  ・・・「擁壁工指針」P104、解図5-9に該当する場合(ω=θ)

・主働土圧:P




※すべり線が地山線付近を通る場合、土圧は地山の表面状態の影響を受けます。この場合、土圧は地山線のすべり摩擦角を考慮した切土部擁壁に作用する土圧として求める必要があります。このとき、すべり線における摩擦角(盛土部擁壁ではφ)は、地山線におけるすべり摩擦角δ'を用います。(「擁壁工指針」P67)
ここに、 θ 背後斜面(地山線)の傾斜角(゜)
P 土圧合力(KN/m)
ω すべり角(゜)
φ 背面土の内部摩擦角(゜)
δ 壁面摩擦角(゜) 
δ' 地山線のすべり摩擦角(゜) 
α 壁背面と鉛直面のなす角(゜)
Ws 土くさび重量(KN/m)

・土くさび重量Wsの算定式


ここに、 H 土圧を考慮する背面土高(m)
β 背面土の傾斜角(゜)
δ 壁面摩擦角(゜) 
α 壁背面と鉛直面のなす角(゜)
γs 背面土の単位重量(KN/m3)
■切土部擁壁としての土圧A  ・・・「擁壁工指針」P106、解図5-10に該当する場合

・主働土圧:P








ここに、 P 土圧合力(KN/m)
ω すべり角(゜)
φ 背面土の内部摩擦角(゜)
δ 壁面摩擦角(゜) 
δ' 地山線のすべり摩擦角(゜) 
δ1 仮想背面(Zの部分)における壁面摩擦角(゜)   
δ1=β(β≦φの場合)、δ1=φ(β>φの場合)
α 壁背面と鉛直面のなす角(゜)
θ 背後斜面(地山線)の傾斜角(゜)
WS1
WS2
土くさび重量(KN/m)
土くさび重量Wsの算定式
 
ここに、 WS1 すべり線と地山線の交点で分割される土塊領域のうち、擁壁側の四角形の土塊重量(KN/m)
WS2 すべり線と地山線の交点で分割される土塊領域のうち、地山側の三角形の土塊重量(KN/m)
Z すべり線と地山線の交点における背面土高(盛土高)(m)
H 土圧を考慮する背面土高(m)
β 背面土の傾斜角(゜)
δ 壁面摩擦角(゜) 
α 壁背面と鉛直面のなす角(゜)
γs 背面土の単位重量(KN/m3)
擁壁背面下端から地山線下端までの水平離れ(m)